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禾のお米、販売をはじめます。

季節は霜降の暦となり、ここ中和もグッと寒さが増してきました。
少しずつ落葉して、それから雪が降って、辺り一面が真っ白に覆われると山の輪郭がはっきりと見えてきます。
境界はどこも曖昧になり、動物たちの足跡が踊り、自然そのものに包まれている現実を思い出させてくれます。
田畑に立つことはできませんが、次の春まで間違いなく地続きであるこれからの冬をしっかりと感じていきたいです。

長らくお待たせしましたが、明日11月1日からお米の販売を始めていきます。

今年は禾として初めて、いくつかの品種をお届けできるようになりました。
私たちも食べ始めてまだ間もないですが、異なるお米をぐるぐると食べられる毎日は豊さに満ちています。
「この品種について」ではなく、「今年の禾のこの品種について」ではありますが、私たちなりの感想を添えてご紹介します。
皆さまのご選択の参考になればうれしいです。

●ササニシキ
1年目から育て続けているこのお米、今年も食べた瞬間にホッとしました。私が一生活者として毎日食べていきたいお米はこのササニシキです。今は新米だからかほどよい甘さを感じますが、それでもやっぱり食べやすいです。強い個性を感じるわけではありませんが、お味噌汁とおかずのある食卓の、そのまんなかにあってほしい、そんなお米だなと思います。

●亀の尾
120年前に山形で生まれた亀の尾は、今のおいしいお米たちのルーツのひとつでもあります。冷害の中わずかに実った3本の穂からはじまり、漫画『夏子の酒』のモデルにもなり、いろいろな逸話が残るお米です。
偶然のつながりですが、私たちは2015年にアジア学院での学びの最中に亀の尾に出会い、2016年移住先の広島の農村の酒蔵でも出会い、そして2018年ここ蒜山での研修先でも出会ってきました。とても珍しいお米ではありますが、不思議と農の道を歩む先々でご縁のあったお米でした。そして昨年、幸運にも私たちにとってのはじまりの亀の尾だった東北の農家さんより種を分けていただくことができ、今年ようやく食べられるようになりました。
亀の尾は一粒一粒が大きく、香り高い、食べごたえのあるお米です。もしご飯だけで食べるなら、きっとこの亀の尾を食べたいと思います。

●こがねもち
70年前に新潟で生まれたこがねもち。こちらも昨年から種を紡ぎ、ようやく食べられるようになりました。正直なところ、もち米を料理したことがなく、育ててみたもののもち米ってどう食べるのかな?から始まりました。いろいろと調べてみて、私は和菓子が好きなこともあり今はずっとおはぎをつくっています。すごく幸せです。友人がレシピを教えてくれたので次は赤飯を炊いてみようと思っています。
こがねもちそのものはコシが強く伸びのあるもち米として評判のようですが、他のもち米を料理したことがないので比較ではよくわかりません。いろいろなもち米を食べてみて違いがわかるようになったとき、改めてお伝えできる何かがあったらいいなと思います。

それともう1つ、農林1号というお米を栽培していましたが今年の一般販売は見送ることにしました。作付面積も小さく、私の未熟さもあり、広く販売できるほどの量が穫れなかったためです。素朴で質素ながらも、懐かしさのようなものを訴えてくる不思議な味わいで、食べた瞬間に「おいしい!」と思うお米ではなく、なにかがどこか気になるお米でした。今年は身近な人たちでありがたく頂こうと思っています。

良きご縁がありましたら、どうぞよろしくお願いします。
近藤亮一